2020年卒の学生における就職活動の実態を見ると、就職予定先を選ぶ際の重視点として「業種」や「勤務地」、「勤務時間・休暇」、そして「給与水準」などの割合が多いことがわかります。実際に働くにあたっては、「労働環境の良さ」そして「高年収」の両立ができていることが理想だと言えますが、高年収を得ることができる業種や働き方にはどのようなものがあるのでしょうか。
年収が高い業種
産業別常用労働者1人平均月間現金給与額総数(2020年)
業種 | 平均月額 |
---|---|
電気・ガス業 | 56万5.982円 |
情報通信業 | 49万1,890円 |
金融業、保険業 | 48万6,735円 |
学術研究等 | 47万5,341円 |
建設業 | 41万7,913円 |
鉱業、採石業等 | 38万1,335円 |
教育、学習支援業 | 37万8,567円 |
製造業 | 37万7,001円 |
複合サービス事業 | 36万8,033円 |
不動産・物品賃貸業 | 35万9,362円 |
運輸業、郵便業 | 34万3,710円 |
医療、福祉 | 29万9,430円 |
卸売業、小売業 | 28万2,148円 |
その他のサービス業 | 25万5,563円 |
生活関連サービス等 | 20万3,912円 |
飲食サービス業等 | 11万7,477円 |
厚生労働省が実施している「毎月勤労統計調査(全国調査)」の結果から、産業別の「常用労働者1人平均月間現金給与額」(2018年)を見てみると、現金給与総額が全世代を含めた平均値でもっとも高かった業種は「電気・ガス・熱供給・水道業」で56万5.982円となっています。
次いで「情報通信業」が49万1,890円、「金融業、保険業」が48万6,735円となっており、産業全体の平均値が36万159円ですから、ほかの産業と比べてかなりの高水準であることがわかります(「現金給与額」は基本給のほか、各種手当、賞与などを含み、所得税や社会保険料などが控除される前の金額です)。
高年収を狙うのなら会社よりもまずは業種を選ぼう
逆に現金給与総額の値が低い業種としては、「飲食サービス業等」が11万7,477円、「生活関連サービス業等」が20万3,912円、「その他のサービス業」が25万5,563円となっており、もっとも高い業種と低い業種では約45万円の違いが出ていることがわかります。
なお、この給与の金額には正社員だけでなく、パートタイム労働者も含まれています。したがってパートタイム労働者の比重が多い職種では平均給与が低くなることを加味しておく必要があります。ただ、こうしたことからも高年収を得たいのであれば、まずは業種を絞ることが大切なのがわかります。
ボーナスは?手当は?事前に確認しておこう
次はボーナスについて解説いたしますが、その前にまず賃金(給与)とはどのように構成されているかを知っておきましょう。
厚生労働省が示している「モデル就業規則(2020年11月)」にある「賃金」によると、賃金は「基本給」「手当」「割増賃金※」の3つから構成されています。また、就業規則で明確にすることで賞与(ボーナス)を支払うことができるとなっています。 ※時間外や深夜、休日に労働した際に支払われる賃金で、通常の賃金より最低25%以上上乗せされた額になります。
ここで注意なのは、賃金は必ず支払われるけれども賞与は支払われない可能性があることと、その内容については企業独自の就業規則(または「給与規定」や「賃金規定」)によって定めらており、企業によって差があるということです。
ボーナスは必ず支払われるわけではない
したがって、賞与(ボーナス)は労働基準法や、その他の法律によって義務づけられているものではないということです。会社の就業規則などに「賞与を必ず支払う」といった記載があれば、支払いの義務は生じますが、その記載がない場合や「業績による」などの内容ならばその必要はないのです。
また支給する際には、就業規則などに支給対象、支給回数・時期、賞与の算定基準、査定期間、支払方法などを明確に記載しておくことが求められています。
就活の際、手当を確認しておこう
賃金には各種の手当が含まれます。手当の詳細についてはモデル就業規則においても細かく分けられており、以下の種類が代表的なものです。就活・転職の際には、会社の規則の中で手当がどのようになっているのか入社前に採用担当者もしくは人事労務部門の担当者にきちんと確認することも大切です。
手当の種類 |
---|
家族手当 |
通勤手当 |
役付手当 |
技能・資格手当 |
精勤手当 |
年俸制とは?ボーナス、残業代はどうなるの?
一般的に給料の支払いについては月払い方式(月給制)を採用している企業が多いのですが、最近では年間に支払う給料額を決め、それを分割して支払う方法を取る会社も増えてきました。
年間に支払う報酬額を最初に決めるという点から、この給与体系は月給制に対して年俸制と言われています。ちなみに年俸制を取り入れている業種としては情報通信業が多く、プログラマーやエンジニアなどの個人のスキルや専門性が求められる職種に取り入れられているようです。
年俸制の特徴は、「あらかじめ決定した年間の給与支給額から月額給与を決定する」ことです。月給制であれば、その年の業績などによってボーナスの額が変更され、最終的な年間給与が決まるケースが一般的ですが、年俸制の場合はあらかじめ1年間に支払われる給与の額が決定しています。一般的に、その1年間の給与額を分割して支払うのが年俸制における給与の支払い方法です。
年俸制における賞与の扱いについては、給与の分割回数によって変わります。年間の給与支給額を12で割り、それを毎月支給するというケースであれば、賞与も含んだ額が毎月支給されるということになり、会社によっては14分割し、そのうちの2回を賞与にあてるというやり方をしているところもあります。
また、基本的には年俸制であっても残業代は支給されるケースが多いとされていますが、なかには年間の給与支給額に「みなし残業代」として一定割合の金額を含んでいるケースもあります。
年俸制における賞与の支払い形式や残業代の取り扱いについては、就業規則の中にきちんと明記されていますので、こちらも就職活動の際に必ず確認しておきましょう。
フルコミッションとは?
働いている人の成果に応じて賃金が決められるフルコミッション制度を導入している企業も見られます。フルコミッションとは完全歩合制のことで基本給は存在しません。なお、フルコミッションを取り入れている企業は、不動産や生命保険などの業界に多い傾向です。
またフルコミッションは、営業職に取り入れられることが多い給与報酬形態でもあります。固定給がないことから、商品が売れないと収入は入りませんが売れた場合は高収入を得ることができます。
フルコミッションの立ち位置については、正社員というよりも個人事業主として捉えた方が分かりやすいかもしれません。フルコミッションの場合、会社と業務委託契約を結び、商品の売り上げに対して事前に取り決めた割合の金額(報酬)を受け取るという形になります。売れれば売れるほど収入を得ることができるので、営業力に自信がある人に向いていると言えるでしょう。
自分がやりたいことや特性の棚卸しを
高収入を得て働きたいのであれば、それが期待できる業種を選ぶことが大切です。ただし、入社できればそれでいいというわけではありません。その会社の企業風土や職場の雰囲気が自分に合っていなければそこで働き続けることは難しいでしょう。また、高収入を得るだけが目標の人生でいいのかというと、そうではないと思われる方も多いのではないでしょうか。
就職できればどこでもいいとは思わず、「自分が本当にやりたいことは何か」を考えることが大切です。また、自分の特性を見極め、それにあった仕事に就くことも大切になってきます。そのためにも、自分と向き合い「本当にやりたいこと」や「自分の特性(強み・弱み)」を知る必要があります。
就職後のことにも目を向けておこう
就職すると学生時代とは違って収入も増える代わりに支出も増えるものです。そのため、お金の管理方法もあらかじめ考えておくようにしましょう。たとえば、給与口座については今まで使用していた口座とは別に新規に用意し、それに振り込んでもらうようにするとよいでしょう。
そうすることによって、実際に労働をして得た対価の積み重ねを実感することができますし、その収入の中でどのように生活していくか、いわゆるキャッシュフローについても考えるきっかけになります。
就職活動のゴールは、新たな人生のスタートです。自分自身を見つめなおし、強みや弱みを再確認したうえで、自分の存在価値をいかに認めてもらえるかを考えながら、社会人生活を送るようにしていきましょう。
新井 智美(あらい・ともみ)
トータルマネーコンサルタント CFP®、一級FP技能士(資産運用)、DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員 個人向け相談(資産運用・保険診断・税金相談・相続対策・家計診断・ローン住宅購入のアドバイス)の他、資産運用など上記相談内容にまつわるセミナー講師(企業向け・サークル、団体向け)を行う傍ら、年間100件以上の執筆・監修業務を手掛けている。
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