銘柄を選ぶとき、業績は見なかった理由
ーー「知名度」「流動性」「成長性」を見た上で、あとは他の銘柄とのバランスということですね。売り上げなどの業績は見なかったんですか?
私たちはその企業が赤字か黒字かはあえて判断材料にしませんでした。たとえ、その年が赤字であったとしても、将来黒字になる可能性あるじゃないですか。
例えば、アマゾンは赤字、黒字が繰り返されるんです。それなのにアマゾンの株が上がっているのは、ジェフ・ベゾスCEOが魅力的なサービスをどんどん出していて、それが評価されているからです。その年、大きな設備投資をして赤字になったとしてもそれが将来につながればいい。投資家はそれを期待するんですよね。配当も出していないんだけど、信じられるんですよね。「何かをやってくれる」って。
ーーなるほど。売り上げよりも、「知名度」、「流動性」、「成長性」を大切にした、ということですね。銘柄の選定は何人ぐらいで行ったんですか?
当時は社長の林和人と私、それから外国株式を専門にやってきたベテラン3人ほどでやりました。
ーー今は「銘柄ウオッチャー」みたいな人が社内にいるんですか?
うーん、商品分析はしていますね。今回のように、イベントがあったり、株式分割があったり、合併があったりとか、一番にキャッチしてシェアする部署があります。
ーー担当部署の方は、30銘柄にそれぞれ担当がついている感じですか?
30銘柄だとプロフェッショナル数人でちゃんと見られる感じですね(笑)。ニュースに気付いたら、アプリで配信していています。ここはいいことも、悪いことも載せるようにしていますね。
ーー意外と、1人でたくさんの企業を見られてしまうものなのですね。
Yahoo!に代わる銘柄を「選挙」で決める
ーーそして、One Tap BUYではYahoo! に代わる銘柄を「選挙」で決めるそうですね。
はい。「知名度」ってどうしても主観が入ってしまいますよね。自分が知っているかどうか。
前回は開業前でもあったので当社の中や周囲の人にアンケートを依頼しましたが、いまはユーザーさんがたくさんいるので、ユーザーさんの声を聞いたらいいんじゃないかと。
一度、ユーザーさんに「どんな銘柄を取り扱ってほしいか」の希望を聞く「予備投票」を実施しまして、そこから特に得票数が多かった上位9銘柄と、当社で選んだETF3銘柄(上場している投資信託、株式と同じように売買できる)を合わせて12銘柄で決選投票を行います。(投票期間は6月27~7月3日)
決選投票を行う12銘柄は次の通りです
- テスラ・モーターズ(電気自動車のベンチャー)
- エヌビディア(世界有数のグラフィック・プロセッシング・ユニット、GPUメーカー)
- ジョンソン・エンド・ジョンソン(総合ヘルスケア企業)
- バークシャー・ハサウェイ(世界最大の投資会社)
- アリババ・グループ・ホールディング(中国のEコマース最大手)
- ネットフリックス(ネット配信サービスで世界最大)
- JPモルガン・チェース(世界60カ国以上に営業拠点を持つ世界有数の金融グループ)
- ゴールドマン・サックス・グループ(世界有数の投資銀行)
- アドビ・システムズ(画像処理、文書編集システムの世界最大手)
- SPDR S&P 500 ETF(代表的な米国株500銘柄で構成されるS&P指数に連動)
- PowerShares QQQ ETF(アップル、マイクロソフトなどナスダックの大型100銘柄で構成される指数に連動)
- Direxion Daily S&P 500 Bear 3X Share (値動きがS&P500指数の値動きの逆方向に300%となる投資成果を目指す)
ーーふむふむ、最後の英語が並んでいるのがETFですね。ぶっちゃけ、ETFって「生活に身近」ではないような気もしますが……。
成長シナリオという意味ではほかの銘柄とは違いますが、「リスクヘッジ」に使える手段があってもいいかな……と。ETFはたくさんの銘柄を買っているのと同じような効果がありますので、個別銘柄に比べると値動きが比較的緩やかです。「この1銘柄を買っておけば、お客様が他の銘柄を勇気を持って買える」というETFを取り扱うことも、それはそれでユーザーさんにとって意味があるかなと思っています。
ーー決選投票のラインナップを見ると、ユーザーさんってもしかして男性の方が多いんじゃないかなって思いましたが、その辺はいかがでしょうか。
そうですね、One Tap BUYのユーザーさんのうち女性は15%ほどです。女性は「積み株」(毎月1000円から株の積み立てができるアプリ)の方が人気があります。
ただ、One Tap BUYの広告を出したときに反応が良いのは意外と女性向けのメディアだったりします。男性向けメディアは広告を見る人の数は多いのですが、実際に口座開設する人の割合は女性向けのメディアの方だったりします。「なぜ資産運用するのか?」の理由がわかれば、行動に移しやすいのは女性なのかもしれません。
ーーよくわかりました。ありがとうございました!
身近な企業を選ぶと良い理由がよくわかった
株式投資をするときに、自分にとって身近な企業を選ぶとよい、とされている理由がよくわかりました。
その企業に対する愛を持つことが投資を長く続けるコツであり、投資を長く続けることが個人が投資で勝つために大切なことである、という論理は以前取材した、元衆院議員の杉村太蔵さんの主張にも通じると思いました。
テクノロジーが発達し、カンタンに利用できる金融サービスが次々と登場する今、「愛」と「時間」があれば、立派な投資家になれるチャンスは誰にでもある、と言えそうです。
文・DAILY ANDS編集部/DAILY ANDS
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