「身近な株」はアンケートで選定

 

ーー「身近な株を選ぶ」ことの大切さをあらためて知ることができました。とはいえ、アメリカにはたくさんの企業があります。One Tap BUYはどのようにして「身近な30銘柄」を選んだのでしょうか?

当社がOne Tap BUYをリリースしたのは2016年6月ですが、初期の30銘柄はアンケートを元に選びました。

One Tap BUYは投資初心者に使っていただきたかったので、株に詳しい人ではなくて、当社の人事などの管理部門の人や、社外の人など、株にあまり詳しくない人にアンケートとりました。米国のおよそ100銘柄について、「よく知っている」「知っている」「知らない」のどれかを答えてもらったんです。そうすると、知名度のある50銘柄くらいに絞れました。

例えば、ファッションブランドの「トミーヒルフィガー」については、社名は知られていましたが、実際にどんなデザインのものかを知っている人は少なかった。そうすると、選定から外れていきます。

また、銀行株はあえて入れませんでした。銀行ってどうやって儲かっているのか、わかりますか?
 

ーーうーん、そう言われると……たくさんお金を貸したら儲かるんだろうな、というぐらいしかわかりません。

金利の差がポイントになるんですが、これは初心者にはわかりにくいですよね。何が流行ったら成長する、というわけでもありませんから。
 

ーー50銘柄から30銘柄にはどうやって絞ったんですか?

次に、私たちは「流動性」を見ました。
 

ーー「流動性」って何ですか?

その株がたくさん売買されているかどうか、ということですね。たくさん売買されていれば「流動性が高い」、あまり売買されていなければ「流動性が低い」と言います。

流動性が低いと、投資家がその株を売りたいときに売れなかったり、買いたいときに買えなかったり、あるいはやたらと高い値段で買わされたりするリスクになってしまいます。それは、株を始めたばかりのユーザーのためにならないことなので、流動性の低い銘柄を省いていったんです。

例えば、私はティファニーをどうしても入れたかったんですが、全然、市場で売買されていなかったんです。ブランドは有名だけど、株としてはあまり売買されていなかったんですね。それはダメだねと、選定から外れました。
 

ーー流動性っていうのは取引の出来高という理解でよいですか?

そういうことです。

(写真=DAILY ANDS編集部)

「知名度」「流動性」の次の選定基準は…

 

ーー「知名度」「流動性」のほかに、選定基準はありますか?

その次に落としたのはフィリップモリスとかだったでしょうか。タバコ産業はシナリオを描きにくいですよね。
 

ーー健康志向が高まっていて、タバコを吸う人は減っていますもんね。「知名度」「流動性」に続いて「成長性」も関係あると。

そうです。

あとは、コカ・コーラとペプシコーラ、P&Gとジョンソン・エンド・ジョンソンのような競合ですね。初めて株をやる人にとって、2社のどちらが良いかって判断しづらいじゃないですか。そこで、どちらも知名度が高いけれども、事業がバッティングしているところは、流動性の高い方を残すようにしました。
 

ーーそれで、コカ・コーラとペプシコーラだったらコカ・コーラを選んだわけですね。

そうです。

アメックス(アメリカン・エキスプレス)とVISA、というパターンもありましたね。

私の周囲にいる金融業界の人間は「アメックスの方がいいのでは?」と言ったのですが、それは金融業界にはアメックスを利用されている方が多いかもしれませんが、発行部数などを見れば圧倒的にVISAだったんです。
 

ーー確かに、アメックスは収入が高い人が使っているイメージで、一般的にはVISAを使っている人の方が多いように思います。

とはいえ、知名度だけで選ぶと小売やITなどに業界が偏ってしまうので、業界が偏らないようにも気をつけました。

例えば、アメリカのトランプ大統領が設備投資を積極的にやります、となって、建設業界に投資したいなと思ったときに、該当企業がないのはよくないと思ったので、知名度は他の企業に比べるとあまり高くはないかもしれませんが、キャタピラーやファイザーなども入れました。

このように、全体のバランスも見つつ、50銘柄から30銘柄に絞り込んでいったわけです。