国立公文書館は3月20日(木)~5月11日(日)の期間、令和7年春の特別展「書物がひらく泰平-江戸時代の出版文化-」を開催する。
同展では江戸時代の出版文化に着目し、近世文学作品を中心に、江戸時代に特徴的な版本の数々を紹介する。
「写本と版本」と「出版の黎明」

日本書紀(写本)
特別展の「はじめに-写本と版本-」では、国立公文書館所蔵の「日本書紀」の「写本」と「版本」を実際に比較して紹介する。

貞観政要(伏見版)
第1章は「出版の黎明」。中世の日本においては、出版は主に寺院を中心に行われた。しかし安土桃山時代末期から江戸時代初期になると、活字技術の伝来と時を同じくして、為政者たちが政治的な意図を持って出版を行うようになる。
彼らの関心は政治・経済・兵法・道徳といったものが中心で、主に漢籍が印刷されることに繋がった。そしてやがて、印刷の対象は日本の古典文学などに幅を広げていく。
「商業出版の時代へ」と「出版統制の時代」

大坂物語
江戸時代前期、いよいよ泰平の時代が幕を開ける。識字率の高まりなど社会の成熟を背景に、それまで上流階級に限られていた読者層が庶民へと広がり、古典文学だけでなく多彩な読み物が好まれるようになる。
こうして、「整版」を主軸とする大量出版・大量印刷の時代がやってくる。第2章「商業出版の時代へ」では大量出版時代の書物や、書物を扱う本屋を紹介する。

三国通覧図説
「整版」による大量印刷、商業出版の進展で、多くのジャンルの本が出版されるようになった。一方、それらの本は自由に誰もが、どんな内容でも出版できたわけではなかった。
そこには、江戸幕府による規制や統制が敷かれていた。第3章「出版統制の時代」では江戸幕府による出版統制や、それに翻弄され、あるいは抗う書き手たち、また江戸幕府「御用」を務めた本屋について紹介する。
「花開く印刷技術」と「近代活版印刷の時代へ」

源氏一統志(葛飾北斎画)