一般的にヤクザといえば、若い頃から無茶をしているイメージが強い。実際、10代の頃からケンカに明け暮れ、乱暴者で荒くれ者という時代を過ごしてきた組員が多いだろう。その無茶は言動面だけでなく、健康面においても同じだ。こう断言する幹部もいる。

「酒、タバコだけじゃなく、今は立派な親分衆だって、若い頃には覚醒剤に手を出していた人も少なくない。ある意味、ヤクザをやっていれば通る道みたいなところがある。問題はそこからだ。のちに親分と呼ばれる人は、30歳くらいでピタリとやめる。ただ、覚醒剤をやめるための施設に通うことなど、間違ってもしない。そんなのは意志の弱い人間のすることだ。上に行くヤクザはそんな軟弱な意志では務まらない。それはそうだろう。ヤクザは命のかかった商売だ。一言間違えただけで指が飛ぶこともある。そんな覚悟があれば、覚醒剤をやめるなんて容易いことだ」

 それでも30代、40代になってもヤクザらしい豪快さは変わらないという。酒を飲むしろビルが一軒建つと言われるくらい豪快の飲み方をするのがヤクザだったと言うのだ。

「ケンカで顔や名前を売るのはもちろんだが、夜の繁華街での酒の飲み方で名前を売るのもヤクザの仕事だ。売り出し中のヤクザが、『何を飲む?』と聞かれて、『レモンサワーで』なんて言えないだろう。肝臓をパンクさせるくらい酒を飲み、タバコも吸う。博打をやれば、顔色を変えずに大金を張るのがヤクザだ。競馬のオッズが変わるほどの賭け方をしてきた者もいる」

ある意味、刹那的であり、痛快なくらいに豪快だ。だからこそ、ヤクザは「絵になる」存在だったのだ。しかし意外なことに、還暦を迎える頃から、多くの親分衆が健康に気を配り始めるという。

「まず、懲役を機にタバコをやめる親分衆は多い。天下の山口組の親分衆も例外ではない。朝起きると、お供の若い衆を連れてウォーキングを日課にする親分もいる。六代目山口組・司忍親分の体脂肪率は驚くべき数値だと言われている。それだけストイックに健康を維持されているのだ。山口組の頂点に立つということは、全国のヤクザ組織のリーダーであるとも言える。そのため、日常生活でも常に自らを律しているのだろう」