――それでも芸人を続けていたモチベーションはどこにあったのですか?

「そこはもう、仕事があるからやるしかないという気持ちでした。ありがたい話なんですけど、当時は『来週も行かなきゃいけないのか……』って憂鬱で、夜の電車に乗って車窓の外を眺めながら涙を流す事もありました」

◆歌の才能が開花。『みんなのうた』が転機に

――アーティストとして歌の活動を始めたのはいつ頃だったのですか?

「2003年くらいです。ライブの企画で『愛の歌を作ってウーピーゴールドバーグと歌う』という夢を掲げてしまって、それをやることが決定してしまったんです。僕はボケで言ったんですけどね(笑)」

――実際に作詞作曲して自身で歌って。周囲の反応はどうでしたか?

「ぜんぜんですよ。みんな『何しとんねん』って感じで。ライブで披露しても受けるでもない滑るでもない、褒められることもない。事務所に『どうですかね?』と言っても何もならない。それが寂しいなと思って、NHKに自分でCDを送ったんです」

――それが『みんなのうた』で放送された「ぬか漬けのうた」なのですね。

「はい。それでも近しい人たちは『う~ん』と反応はイマイチで。でも、千原ジュニアさんだけが『凄いやん』って褒めてくれたのを記憶しています」

◆心の声をダイレクトに表現できる「歌」に惹かれた

――でも、その後も歌の活動は続けられていますよね。

「『ぬか漬けのうた』がNHKに採用された時に、客観的に歌詞を聞き直してみたら、自分の家とは真逆の家族像、いわば理想を歌っていたことに気付いたんです。その時に歌というのは、心の奥底で思っていることが如実に現れるものなんだと。劣等感、コンプレックスを歌詞にしたためても、聞く人たちがそれぞれ自分に照らし合わせるエンターテインメントなんですよね。

対してお笑いは、嫌なことがあって疲弊していてもそれを隠して『イエーイ!』と楽しませる世界。全く違うエンタメだからこそ、歌も続けてみたいと思ったんです」