埼玉県立歴史と民俗の博物館で、3月15日(土)~5月6日(火・振休)の期間、特別展「はたらく装いのフォークロア」が開催される。
フォークロアの知恵を見つめよう
フォークロアは、民間伝承の意。
四方を海に囲まれ、豊かな山林や肥沃な大地に抱かれた日本で、人びとはさまざまな環境で農耕、狩猟、漁撈などに励んできた。その際に身に着けた衣服や用具からは、はたらくための実用的な工夫やさりげない美意識がうかがえる。
今回開催される特別展では、各地に伝えられてきたはたらく装いから、フォークロア(民間伝承)の知恵を見つめる。
私たちも普段働く時、「今日は仕事でこんな作業をするから、こんな格好をしよう」と考えたことがあるのでは。そうした想いは、現代も過去も変わらないのかもしれない。先人たちは、どのような衣服や用具を利用していたのか、そしてどんな工夫をしていたのだろうか。
「はたらく装いのフォークロア」では、埼玉県立歴史と民俗の博物館蔵の重要有形民俗文化財「北武蔵の農具」のジュバンや、
館山市立博物館蔵の千葉県指定有形民俗文化財「房総半島の万祝及び製作関連資料」の万祝着、
栃木県立博物館蔵の猟師衣装、
大田区蔵の重要有形民俗文化財「大森及び周辺地域の海苔生産用具」のノリゲタも展示される。
3つの見どころを紹介
「はたらく装いのフォークロア」のみどころは大きく分けて3つある。
1つ目は、田畑・山・海のはたらく装いが大集合する点。
仕事着はそれ自体がコレクションとして、または生産用具のコレクションに含まれる形で収集が行われてきた。その中には、次代に受け継ぐべきものとして文化財に指定されたものもある。同展では、約170点の関連資料を紹介する。
2つ目は、「機能をつきつめたらこの形―意外な仕事着」。仕事着には動きやすく汚れにも強いことが求められるが、巨大な下駄、片方しかない手袋、紐のついた板状の皮など、見ただけでは使い方のわからない品々も並ぶ。たとえば、海士(あま)が着用したフンドシは最古の仕事着ともいえるだろう。装いを構成する衣類や用具から、人々がどのようにはたらいてきたかを考える。