ジョナサンはこういっている。

「オーストラリア政府が16歳未満のSNS利用を禁じたことは、大英断でした。最初にこの議論が始まったときには反対派の意見も強かったのですが、私は法案成立を推し進める議員らに直接メールをし、『屈してはいけません。これはオーストラリアの未来に関わる大変重要な法案です』と助言をしました。今後、アメリカでも法律化されるよう活動していくつもりです」

 なぜ、10代にSNSを使わせないほうがいいのか?

「理由は極めて単純です。彼らの脳はまだ発育中で、スマホから流れてくる悪い情報に極度に影響されやすいからです。加えて10代はそれより上の世代に比べてSNS中毒にもなりやすい。これらはすべて、実験で証明されたことです。
 私は’13年頃から、10代とSNSの関係について研究を始めました。当時はSNSが世に出回り始めた頃でしたが、この頃から青少年の間でうつ病などの精神疾患が世界中で急増したのです。
 一例を挙げれば、アメリカでは10歳から14歳の、自傷行為で搬送された女子の数が、10年から’20年までの10年間で2.9倍に増加しました」

 SNSでは過激で極端な意見だけが残ってしまうのはなぜか?

 それに対してジョナサンは、

「わかりやすい例が、コロナ禍のワクチン論争です。ワクチンの有効性は、科学的に考えれば疑いようがありません。一方で、人々の心の中には『本当にコロナワクチンを打っても大丈夫なのか……』という不安も生じました。これは仕方ないことです。
 問題はそこからです。不安に思った人が、SNS上で『ワクチンは打たないほうがいいんじゃないか』という意見を見つけて『いいね』を押す。すると、そのSNS上には『打たない方がいい』という情報が回ってくるようになる。次第にそれは『打ってはいけない』『打つと死ぬ』にエスカレートしていきます。
 その情報に浸かった人は、完全なワクチン反対派になるうえ、ワクチン推進派に対して過剰な攻撃を仕掛けるようになる。本当は穏やかな性格の人が、接種を勧める医者に『人殺し!』と叫ぶまでに豹変するケースを、皆さんも目撃したことがあるでしょう。
 そうして、SNS上からは良識派の声が消えていきます。反対派に絡まれるのが怖くなるからです。結果、SNS上には過激な否定派と、それでも使命感からワクチン接種を呼びかける人しかいなくなりました」