トランプ大統領は2期目で、メディアに対して強硬派のブレンダン・カー氏を、放送業界を監督するFCC(米連邦通信委員会)の委員長にした。カー氏はNPRとPBSの放送内容が的確かどうかなどの調査を始めた。また、FCCと連動する形で共和党が与党の議会はNPRとPBSのトップを証人に呼び、予算を盾に圧力をかけた。

 さらにFCCは3大ネットワークへの調査も進めている。CBSには、ニュースの歪曲があったかどうか、ABCについては大統領選でのトランプ氏とハリス氏の討論会の扱いに問題がなかったかどうかを調べている。NBCニュースの親会社が所有するコムキャストに対しては、同性愛者などが優遇されているようなことはないかなど、多様性の問題を持ち出しての調査を行っている。

 3大ネットワーク自身はFCCからライセンスを受けていないが、放送を流している傘下のローカル放送局はFCCから放送免許を受けている。免許を盾にした圧力だ。

 米国では大統領選の最中から、メディアの委縮は始まっていたと言われている。ワシントン・ポストやロサンゼルス・タイムズがオーナーの命令でハリス氏支持の公表を見送った。選挙後、ABCは、ニュース番組のキャスターの発言をめぐってトランプ氏から訴えられた名誉棄損で、法廷闘争を避けるため1500万ドル(約23億円)を支払うことを決めて早々に和解した。

 そのABC系のスポーツ専門局のESPNは、トランプ大統領の就任式があった1月20日に行われた大学フットボールのプレーオフの生中継で、ハーフタイムの時間に事前収録したトランプ大統領の政治的なメッセージを放送した。ABCやESPNの社内でも、スポーツの政治利用を許した社の姿勢に批判が出ているが、トップが責任を取るような事態には発展していない。

 トランプ大統領は放送や記事の内容をめぐってCBSやアイオワ州の地方紙デモイン・レジスターも提訴している。