しかも、救急車が到着して救急隊に引き継ぐまで、再診断・電気ショック・心臓マッサージを繰り返さなくてはいけないので、終わりがありません。最初はそういう作りにしたのですが、試しに5歳の息子に遊んでもらったところ、『このおもちゃ、いつ終わればいいの?』と怒られてしまいました。おもちゃの場合は、子どもに達成感を与えてあげなければならないと考えて、実際のAEDには無い『ミッション完了!』という音声を入れることにしました」

◆子どもたちの反応は……

イベントの様子
イベントの様子
 すでに完売している分のトイこころは2025年2〜3月の発送となるため、まだ購入者からの声は坂野さんのもとに届いていませんが、イベントなどで子どもたちに遊んでもらう機会はこれまでに何度もあったそう。

 子どもたちはトイこころを受け取ると、大人に教えられなくても、自発的に遊びかたを見出してくれるといいます。

「本体から伸びている2つの電極パッドには、それぞれ体のどの部分に貼ればよいかイラストで示されているのですが、子どもたちは何も説明されなくてもそれを見てぬいぐるみの正しい場所にパッドを装着し、ショックボタンを押したり、心臓マッサージをしたりして遊んでくれます。

本体に『AED』と入れることで、無意識のうちに子どもたちにAEDを認識してもらうことを狙っています。文字を読めない子どもでも、繰り返し目にすることで印象に残りますし、おもちゃで見た記憶を思い出して、街中で宝探しのように『AED見つけた!』と興味を持ってもらえたら嬉しいですね。

イベントではたくさんのお子さんが来てくれるので、なかなか一人ひとりに遊び方を教えてあげることができないのですが、まったく問題なく楽しんでくれますね。蘇生中に注射器のおもちゃでぬいぐるみに注射をしている子もいれば、電気ショックボタンを押すと振動するのが楽しすぎて音声を聞かずに連打している子もいます。本来の救命ではありえない場面ではあるのですが、AEDを知ってもらうきっかけとしては、楽しく遊んでもらえているだけで十分だと考えています」