タカラジェンヌの金銭事情
日本において舞台芸術の花形といえば、宝塚歌劇団を思い浮かべる人も多いのではないだろうか。「東の東大、西の宝塚」と呼ばれるほど高倍率の競争を勝ち抜き、宝塚音楽学校を卒業した容姿端麗で芸達者な未婚女性(通称・タカラジェンヌ)が、男役と娘役に分かれて演じるミュージカルは、100年以上に渡って多くの人を魅了している。
個人的なことであるが、筆者は20代半ばの頃、元タカラジェンヌの歳上女性とお付き合いをしていたことがある。交際を始めたのは、彼女が宝塚を退団した後のことなので「すみれコード」(団員に求められる行動規範。団員は恋愛禁止条例と言われている)を侵していないことは強調しておこう。
ここからは彼女に聞いた話であるが、華やかに見えるジェンヌたちも阪急電鉄の社員であり(それも高卒社員)、一部のトップスターを除くと年収は決して高くない。そのうえで、多くの人に夢を与えるジェンヌらしく振る舞わないといけない。健康や外見を磨く費用はもちろん、舞台の衣装代や装飾代も基本的には自腹だそうだ。
そのようななか、彼女は金銭的に困ったことは一度もないと言う。なぜなら、彼女の父親は、都内の優良未上場企業オーナーであり、生活費の仕送りはもちろん、兵庫県宝塚市内に立派なマンションを用意してもらうなど、親から全面的なバックアップを受けていたそうだ。
ちなみに、彼女の姉も元タカラジェンヌで、活動時期はほぼ被っていたため、親は同時期に2人分のバックアップをしていた(マンションは姉妹でシェアしていたそうだ)。宝塚音楽学校に入学してからの費用に加え、幼少期から通うバレエ教室や声楽教室などのレッスン代を考えると、非常に高額になるだろう。それをほぼ同時に2人分である。
舞台に立つために必要な要素はカネ!?
彼女に言わせれば、決して自分が特別な存在ではなく、多くの同期が、親からのバックアップを受けていたという。言い換えれば、濃淡はあるにせよ、経済的に余裕のある家庭の子女がタカラジェンヌになっているということでもある。
彼女の言葉には、妙に納得した。筆者の幼稚園からの友人女性Bは、幼少期よりバレエを習っており、現在は日本最高峰のバレエ団でソリスト(プロのバレリーナ)として活躍している。その姉もタカラジェンヌであり、やはりB家は裕福な家庭だ。
小学校からの友人男性Cは、都内の建設会社オーナー社長の息子なのだが、大学卒業後、どこにも就職せず舞台俳優になってしまった。そして、その姉も元タカラジェンヌだ。C家が裕福なのは言うまでもない(蛇足だがCの母親、つまり建設会社の社長夫人は、びっくりするくらい漫画やドラマにでてくる「ザマス夫人」だ)。
もちろん、筆者の狭い交友範囲と、限られたサンプル数では「舞台に立つために必要な要素はカネ」と言い切ることはできない。あなたの知人友人にタカラジェンヌや芸術家はいないだろうか。該当者がいたら、その人の実家は裕福かどうかを思い返して欲しい。
文・澁谷 稔(ライター)/ZUU online
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