芸術とお金は切っても切り離せない関係にある。人類史を遡っても、戦争が少ない安定した時代に芸術や文化が隆盛しており、後世に残る芸術家にも必ずと言っていいほどパトロンがついていた。

「衣食住足りて礼節を知る」という言葉があるが、精神的・物質的安定があって、初めて芸術を愛でる余裕が生まれる。それは、現代においても通じる真理ではないだろうか。

芸術に触れる機会が多い富裕層

富裕層は芸術に触れる機会が多い。その理由として、まず金銭的な余裕が挙げられる。クラシックコンサートやバレエ、オペラなどのチケットは1人何万円というケースも少なくない。それなりの絵画や骨董品を自宅に飾ろうとしたら、チケット代とは桁が違うお金が必要だ。

次に、上記と「鶏と卵」の関係にある理由だが、富裕層同士の会話やコミュニティに、芸術が取り上げられやすいということが挙げられる。筆者の幼稚園からの友人男性Aの祖母は、日本画の巨匠で、人間国宝級の御方だ。日本画教室も開催しており、知人友人のセレブママたちが定期的に日本画を習っている。

その日本画教室は紹介制なので、基本的にはクローズドな富裕層コミュニティが形成されている。一般の方が入れないわけではないが、居心地の悪さや、高い月謝に耐えきれず、そのうち離脱してしまうだろう。

妻よりも多忙であることが多い夫たち(多くの場合、企業役員や開業医だろう)も、一般の方より芸術に通じていることが多い。「富裕層ビジネスの営業マンは芸術を学んで会話のネタにしろ」と教えられることがあるが、それは多くの場合、有効な戦術だと思う。

富裕層の家に生まれると人生の選択肢が広がる

芸術に触れる機会が多い富裕層の中には、自分の子供を芸術家(役者や音楽家を含む)に育てあげる人もいる。用具やレッスンなどの環境面を整えることによって、またはコネクションを活用することによって、一般家庭の子供より有利な条件で芸術教育することができるのだ。

芸術家というのは限られた分野でしかマネタイズできない個人事業主だ。仮にうまくいかなくても、違う分野のスキルを学び直す時間的余裕(イコール経済的余裕でもある)があったり、いざとなったらファミリーカンパニーで雇用したりできる富裕層の方が、子供の教育の選択肢でも、よりリスクテイクできると言える。

言い換えれば、富裕層の家に生まれる方が、子供自身は無意識だったとしても、人生の選択肢が増えるということだ。

(写真=Aleksey Sagitov / Shutterstock.com)