◆見栄が人を動かしてしまう
しかし珠江さんの家は「言われるがまま全部買う」というのだから、普通ではない。
「愛用の足踏みミシン使ってるんだから、いらねって言ってっべず!!!」
祖母がそう主張するにもかかわらず、祖父が買うので「ご注文の品お届けでーす」とサクサクと最新ミシンが運び込まれる。去年買い替えたばかりの冷蔵庫も洗濯機もエアコンもオーブンも扇風機も掃除機も、次々と最新型に差し替えられる。家電はリースか? という勢いの頻度ある。
その光景にご近所は「あそごのずんつぁ(じいさま)まだ買ったべ。さすがだずねぇ~」とはやし立て、祖父が満足げに笑う。
「家計に余裕があるならそれもいいんでしょうけど、家業は傾き家計は火の車。借金取りまで来てるんですよ!? でもじいちゃん、すごい見栄っ張りだったんですよね。いつまでも、いいところのお坊ちゃん、地主様、さすが!って思われたかったんじゃないでしょうか」
庶民的な家庭の主婦がエルメスにハマったり、無理してママ友と生活水準を合わせていたら借金を背負うはめになったりと、いまでも「見栄」や「憧れ」で金銭感覚が狂う話は、消費社会に生きる人の世の常である。消費者のニーズにあわせて商品を売り込むという行為については、いまなら隙あらば画面に表示されるサジェスト広告なども似たようなものだろう。
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