◆年齢(若さ)とは裏腹に成熟した雰囲気

「偽りのくちびる」(日本クラウン)
「偽りのくちびる」(日本クラウン)
 原田は、2002年9月22日生まれ。和歌山大会が6月開催だったから、13歳の歌唱ということになる。人生経験(年齢)に応じた歌唱の味わいに偏差はあるが、若い歌い手が未熟だとは限らない。例えば、1995年にデビューシングル「Don’t Take It Personal」をリリースしたモニカはまだ14歳だった。ベテランのR&Bシンガー顔負けの歌唱力で、当時のR&Bチャートでは1位を獲得した。

 のど自慢出場からおよそ6年、2022年1月にデビューした原田のキャッチフレーズはこうだ。「純度120%の歌声」。ぷりっぷりの若々しさを誇るパワーワードだが、むしろ彼の成熟を表現しているところが興味深い。筆者の愛聴ナンバー「偽りのくちびる」(2022年リリース)なんて聞くと、ムード歌謡的でどちらかと言えばクルーナーな声がしっとりしみこんでくる。

 歌唱中のなまめかしい表情も印象的だ。身体を揺らしながら、軽くフィンガースナップでリズムをとる姿は、五木ひろしさながらのたたずまい。さらに同曲のアンサーソングとしてリリースされた「偽りのくちびる~最後の恋~」(2022年リリース)は、女性目線に変えて歌われていて、これもシブい。純度の高い歌声でありながら、基本的に低音域を丁寧に響かせるなど、年齢(若さ)とは裏腹に成熟した雰囲気がある。