ナベツネはこのときはまだ論説委員長だった。
よくナベツネは権力との距離の取り方がおかしいと批判されたが、彼そのものが権力であり新聞社を私物化し続けたのである。
ポストによれば、幾度となく「ナベツネ」と書いていたら彼から内容証明が届くようになったそうだ。
ついに記者がナベツネに呼び出される。そして「いいか、記事の中で呼び捨てにするな。“さん”をつけろ、“さん”を」
以来、批判的なことを書いても「ナベツネさん」と書けば内容証明は来なくなったという。
私は編集長在籍中に何度も「ナベツネは」とタイトルを打ったが何もいってきたことはなかった。
ポストは「人としての尊重がある限りは、いくら批判されても許容するという姿勢でした」と好意的に書いているが、メディアを選別していたのではないか。
渡辺恒雄という人間はジャーナリストだったのかを含めて、今一度、徹底検証するべきだと思う。
お次は、文春の三菱UFJの特集。
このところ大銀行の三菱UFJで不祥事が続発している。女性行員が10億円を窃盗したり、副支店長が「司忍」と名乗り顧客を脅迫したり、顧客情報を違法共有したりと、銀行とは思えない悪質なものばかりである。
今の頭取・半沢淳一(59)は、テレビドラマで「倍返し」というセリフで有名になった半沢直樹のモデルだといわれる。
そんなやり手の下で、これほどの不祥事が続発しているのはどうしてなのだろう。
顧客の貸し金庫から10億円という巨額なカネが堂々と盗まれていたというのにも驚くが、もっと悪質なのは、融資の際、担当でもないのに取引銀行の融資の話に同席して、社長の個人情報を入手して、Yahoo!ファイナンスの掲示板に誹謗中傷を繰り返し書き込んだという。
その中では、山口組組長の名を名乗ったりしていたというのである。
そのためもあって同社の株価は下がり続けた。同社が被害届を出し、犯人を三菱の副支店長と特定され逮捕されたが、三菱はこの件を公表していないという。