おせちをいただく際には、「祝い箸」という主に柳の木で作った、両端が細くなった特別な箸を使用します。両端が細くなっている理由は、片方は自分で使用し、もう片方は神様に使っていただき共に食事をする、という意味を持っています。ですので、反対側を使用してはいけません。

祝い箸は、神様と共に料理をいただくという形で、家族や仲間との絆を深め、神聖な時間を共有するための大切な役割を担っているのです。

お屠蘇(とそ)をいただく

お屠蘇は、無病息災や長寿を願って飲む祝い酒です。「屠」は邪気を払い、「蘇」は生気を蘇らせるという意味があり、一年間の邪気を払い、新しい年を健やかに迎えられるようにとの願いが込められています。屠蘇として通常の日本酒が飲まれることもありますが、本来のお屠蘇は「屠蘇散(とそさん)」や「屠蘇延命散(とそえんめいさん)」と呼ばれる数種類の薬草を日本酒やみりんに漬け込んだ薬酒のことです。

お屠蘇をいただく際は、家族の年齢順に盃を回し、若者から年長者へと順番に飲みます。この作法は、若者の清らかな気で邪気を払い、長寿の願いを年長者に届けるという、古くからのしきたりです。ちなみに、厄年の方は他の方から厄を払う力を分けてもらうために年齢に関わらず最後に飲みます。

お屠蘇は、少量を小さな盃でいただくのが伝統的な飲み方です。通常、3種類の大きさの盃が用意され、最も小さな盃から順に三度にわけて飲み進める形式となっています。

お屠蘇の飲み方

一つ目の盃
一番小さい盃で一口飲みます。これをいただいた後、次に中くらいの盃に移ります。

二つ目の盃
中くらいの盃でさらに一口飲み、一番大きな盃に進みます。

三つ目の盃
最後に一番大きな盃で少量をいただきます。これで三度の盃が完了します。

お屠蘇をいただく際には、「一年の無病息災と繁栄を願う心」を込めて飲むことが大切です。単に形として飲むのではなく、家族そろって新年の健康を祈りながら、静かに味わうことが重んじられます。