現在は、本部がすべての商品を仕入れているわけではないようですが、本部主導の仕入れがヴィレヴァンらしさの喪失に関係していると思います。このイメージが拭えなかったことも、コロナ禍の赤字から回復できなかった要因になっているのではないでしょうか」
◆店員に個性があっても、それを発揮する場所がない
――社員にヴィレヴァンらしさの教育ができていなかったことも要因の一つだと言われています。店員さんの個性やオリジナリティにも変化が見られるのでしょうか?
ヴィレ全「全国のヴィレヴァンをまわっていると、社員や店員さんはサブカルの知識をもっている方が多いと感じます。譲れない趣味や、個性的なものが大好きな店員さんもたくさんいます。でも今の時代、店員さんの『趣味・嗜好』だけで商品を仕入れて、本当に売れるかという問題があります。
昔のように業績が良くて会社に余裕があれば、仕入れも自由にできたと思います。その結果、『なんで、こんな商品置いてあるの?』『これ、だれが買うの?』と笑えるコアな商品がたくさんお店に並べられていました。でも今は、その余裕がなくなってしまい、店員さんの個性が出しにくくなっていると思います。個性があっても、それを発揮する場所がない。仕組み的な問題も大きいと思います」
◆“ヴィレヴァンの魔法”がかかりにくくなった背景
――個性があっても発揮する場所がないのは辛いですね……。
ヴィレ全「昔は、店員さん一人一人がとんでもない趣味や知識を持っていて、その方の権限で商品を仕入れていました。仕入れた商品の魅力を余すことなく伝えたくて、店員さんが自分のプライベートの時間を使って、さらに知識を磨いたり、趣味の延長でポップを描いていたんです。基本的に店員さん個人の『好き』という気持ちで、店舗の個性が成立していました。それをだれかが教えるのは少し違うかな、という気がします。好きでやっていることですからね。