アリ・アスター製作総指揮『骨』の政治的背景
新世代のホラーマスターことアリ・アスター監督は、新作映画『Beau Is Afraid』(原題)のアニメパートをレオン&コシーニャに依頼したのに加え、自らが製作総指揮を務め、短編アニメ『骨』(原題『Los Huesos』)も手掛けている。
2023年、美術館を建設する際に一本の古いアニメーションフィルムが発見された、という設定で『骨』は始まる。レオン&コシーニャがこのフィルムを復元したところ、ひとりの少女が2体の人骨を使って、死者を甦らせる儀式を行なっている様子を描いたアニメーションらしいことが分かる。少女が甦らせようとしているのは、ディエゴ・ポルタレスとハイメ・グスマンという政治家だった――。
より不可解なこちらの作品も、新谷氏に解説してもらおう。
新谷「チリの歴史に疎い日本人が『骨』を観ると、ただ不気味な儀式の様子を描いたアニメーションにしか見えないかもしれません。少女のモデルは、コンスタンサ・ノルデンフリーツという実在した女性。彼女が甦らせようとしているディエゴ・ポルタレスは、チリ建国時代の政治家です。1833年にチリの最初の憲法を制定したことで知られている歴史上の人物で、コンスタンサとは恋愛関係にありました。もうひとりのハイメ・グスマンは、ピノチェト政権の中心人物で、現在のチリ憲法の起草者です。ポルタレスとグスマンは保守系の政治家です。
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