レオンとコシーニャは共にチリ出身で、1980年生まれ。2018年に制作した初の長編アニメ『オオカミの家』は、ベルリン映画祭でカリガリ映画賞、アヌシー国際アニメーション映画祭の審査員賞などを受賞した。レオン&コシーニャの他にも、『Bear Story』(14)や『Bestia』(21)といったチリの短編アニメが多くの映画賞を受賞しており、チリのアートアニメーションは国際的に注目を集めていると新谷氏は語る。

 チリで暮らす人たちにとって、ドイツから来たパウル・シェーファーが設立した「コロニア・ディグニダ」はどんな存在なのだろうか。

新谷「『オオカミの家』の冒頭に実写パートがあり、この冒頭部分を見れば、チリの人はコロニア・ディグニダのことだとすぐに分かるのではないでしょうか。

 パウル・シェーファーはピノチェト政権と親しかったことで、1990年代まで悪行の数々は裁かれませんでした。ピノチェトが完全失脚した2000年代以降、世論の高まりとともに、コロニア内部で繰り返された非道な行為に司法の手が及んでいきます。シェーファーは逃亡先のアルゼンチンで2005年に逮捕され、2010年に刑務所病院にて88歳で亡くなっています。