じゃあ「過去や未来を変えてはいけない」というその鉄則を課しているのは誰なのか。実際にはタイムスリップなんてことはないわけですから、もちろん現実の何かではない。ドラマを見る上での常識として、勝手に私たちがそう思っているだけなのです。

 しばしばこの鉄則に私たちが納得してしまうのは、多くのタイムスリップを扱った物語では過去や未来を変えることによって誰かが存在しなくなる、消えてしまう、だからやっぱり変えてはダメなんだという設定・人物配置が提供されます。おのずと「絶対に変えられない」状況が与えられ、じゃあどうしようか、という展開になる。

 しかし、『不適切にもほどがある!』では、オガワと純子が震災で死ななくても、決定的に誰かの存在に影響を及ぼすことはありません。オガワの妻(イワクラ)はもう亡くなっているし、孫の渚ちゃんは産まれているし、この悲しい運命を強引に曲げて、2人があの震災を生き残ってしまっても、誰かが消えてしまうようなことはないわけです。

 それなら、変えたっていいんじゃないか? ということをやろうとしてるんだと思うんですよね。タイムスリップドラマの常識に抗う、視聴者が勝手に鉄則だと思っている常識を、疑ってみる。そういう意味で、とても挑戦的な作品だと感じます。