◆歌唱シーンの納得の再現率

また、歌唱シーンや音の表現も、原作への理解を深化する要因となっている。従来、音楽を扱った漫画は映像化が難しいと言われてきた。その理由は、音や歌声が直接的に聞こえない漫画は、読んでいる時点で頭の中に各々のサウンドが思い描かれているからだ。カラオケシーンが多く存在している本作も、狂児は、聡実は、どんな声をしてどんな歌い方をしているのか……少なからず想像していたが、そのハードルをいとも簡単に超えてきた。

本予告で一部公開された狂児の勝負曲・X JAPANの「紅」は、全編裏声で鬼気迫るほどの情念を表現。真剣なのに笑えるという塩梅が秀逸だった。

本編では、狂児と同じく“恐怖”を逃れたいバラエティに富んだヤクザの面々も歌声を披露。「月のあかり」(桑名正博)や「行くぜっ!怪盗少女」(ももいろクローバーZ)など、昭和の名曲から令和のヒットソングまでをユーモアたっぷりに歌い上げる。歌い方から表情までもがまさに”解釈一致”と言ってしまうほどマッチしており、原作で描かれた歌唱シーンにますます磨きをかけている。