◆怒る看護師&医師

「そんなニオイがするようなシャンプーを使うから、化学物質過敏症になるのよ!」

診察の予約を入れると、事前に手紙が届く。診察当日はしっかり入浴をして化粧品などは一切つけずに来るようになどの、指示が書いてあるのだ。そのとおりに入念に全身を洗い、挑んだのが裏目に出た。

その専門外来では外からの化学物質を持ち込まないために、更衣室で用意された衣服に着替えてから、待合室に入室するシステムだった。

化学物質過敏症沼202407
「当時はまだ、化粧品や柔軟剤の香りが体調不良の原因になることが広くは知られておらず、私も化学物質過敏症に関して無知だったので、シャンプーの香りにも気をつけるべきだとは、知りませんでした。しかしこの界隈では常識とされているようなので、そこは私が勉強不足だったのでしょう。でもできれば、事前に届く手紙に『無香料のもので洗う』と書いておいてほしかった……」

勉強不足だからといって怒らんでも、とは思う。

しかしこれはまだ、些末(さまつ)なことだった。同外来におけるナオさんのファーストインパクトは、「高額サプリと空気清浄機を買わないと激怒される」というナニコレ診察だ。

「診察がはじまると症状の聞き取り、それから生活指導が行われました。先生いわく、歯磨き粉や洗剤も、石けん系のものを選ぶ。毎日散歩と半身浴。便秘はダメ……そんな一般的な話のあと、コエンザイムQ10のサプリ摂取を勧められるんです。“これが肝心!”といった雰囲気でした」

化学物質過敏症沼202407
医師の話では、本来は1カ月分10万円はする高品質なサプリメントを、メーカーの社長がうちの患者のために特別に月3万円で買えるようにしてくれている。サプリとあわせて、空気清浄機も必須。知り合いの店に置いてあるから、そこで買うといい、とのことだった。

サプリメントは“食品”であり保険診療で認められないゆえに、高額になりがちだ。しかしナオさんには、貯蓄がなかった。