◆川の底は、のぼることができない“アリ地獄”だった

「アリ地獄みたいにすり鉢状になっていて、砂利しかないから踏んでものぼれないし、どんどん足をとられて後ろの深い方へ体がとられてしまう。『これはヤバいな』と思った瞬間には“プチパニック状態”になっていました」

友人たちはその段階でも、“郷沼さんが悪ふざけをして、溺れたふりをしている”と、本当に信じていたそうです。

「『後ろはもっと深そうだから、泳いで行ってみてよ(笑)』と言われて、どこまで深いんだよとさらに焦りましたね。僕の近くには大きな岩があって、その根元がざっくりとえぐれていたんです。

どれだけ焦って斜面をのぼろうとしても、一向にのぼれない状態が10分近く続いたと思います。友人たちもちょっと焦ったのか、『とりあえず、後ろの岩につかまれ』『岩にのぼって休め』と言ってきて。仕方なく体を反転させたとたん、全身に鳥肌が立つくらいの寒気に襲われたんです」