今年の1月22日、文春を提訴した際の文章は以下の通りだった。

「提訴のお知らせ
本日、松本人志氏は、株式会社文藝春秋ほか1名に対して、令和5年12月27日発売の週刊文春に掲載された記事(インターネットに掲載されている分も含む)に関し、名誉毀損に基づく損害賠償請求及び訂正記事による名誉回復請求を求める訴訟を提起いたしました。
今後、裁判において、記事に記載されているような性的行為やそれらを強要した事実はなく、およそ『性加害』に該当するような事実はないということを明確に主張し立証してまいりたいと考えております。
関係者の皆様方にはご心配・ご迷惑をお掛けいたしますが、ご理解のほどよろしくお願い申し上げます。
松本人志氏 代理人
八重洲総合法律事務所
弁護士 田代政弘」

 ここには「(文春の=筆者注)記事に記載されているような性的行為」はなかったと明確にいっているのである。

 だがこの文章を読むと、そうした会合があり、そこに参加して、女性たちと性的関係をもったことは認めているのだから、松本側の実質的全面敗訴といっていいだろう。

 最初から、松本と女性二人だけ、密室で行われたことで、その際の写真や音声、医者の診断書などの「物的証拠」はなく、法廷での被害女性たちの証言だけが文春側の頼りだったため、私は、いくつかの媒体に「文春にとってはきつい裁判になる」と書いた。

 裁判の長期化も予想された。私の経験からいっても、名誉棄損裁判は、報じたメディア側に厳しい裁判なのである。

 だが、松本側は、証言者のA子を執拗に尾行し、彼女の親しい人間に、A子が法廷に出て証言しないようにいってくれと圧力をかけたり、多額の金銭を払う用意があると申し出たりと、信じられないような愚行を繰り返し、そのことも文春で報じられた。

 しかし、A子の意志は固く、揺らぐことはなかった。

 このまま彼女が証言台に立ち、松本から受けた性的虐待について話せば、メディアは挙って報じることは間違いない。