伊藤「私は14歳の時に女子プロレスを見始めました。もともとはプロレスが大嫌いだったんですけど、いきなりクラッシュに心を奪われて大好きになって。当時は子どもじゃないですか。それが全部心を持っていかれたわけですから、その時の私にとって『全日本女子プロレス興業とクラッシュ・ギャルズがやること』が人生の正解なんですよ。それに反するものはすべて邪悪なものなんです。その中で最大最凶の『邪悪』がダンプ松本選手だったわけです。だから、当時14歳だった私は『この人が死んだらどんなに私は幸せか』と本気で思っていました。だからといって刺そうなんて思わないですけど、例えば包丁があったら『これでアイツ死ぬんちゃうん?』と頭によぎったことくらいは何度もあります」
そんな伊藤が初めて女子プロレスを生で観たのは、ドラマ内でクライマックスとして描かれた伝説の試合だった。14歳の少女の「初めての女子プロレス」としては、あまりにも運命的でショッキングだ。
伊藤「女子プロレスを最初に生で見たのが、1985年8月28日に大阪城ホールであった千種さんとダンプ選手の敗者髪切りデスマッチ(1度目)でした。その時の千種さんって、プロレスラーなんですけどアイドルでもあるんですよね。そのアイドルの中でも、たくさんテレビや雑誌に出ているトップ級だったわけです。初めて生でクラッシュ・ギャルズの歌を聞いたときに『あー、やっと会えた』『テレビの人だ、本当にいるんだ』って感動しました。たぶん、今の若い女の子たちがSnow Manのライブに初めて行った時の感動と同じようなものだと思います。すごく幸せだったんですけど、セミファイナルの試合が終わって、敗者髪切りデスマッチのルール説明があった時くらいから会場の雰囲気が一変したんですよ。『いよいよ決戦だ』『何か事件が起こるぞ』『私たちはすごいものを見ることになる』というような、異様な空気になったんです」