『地面師たち』や『全裸監督』などでも評判になったNetflix作品のリサーチ力。今作でも遺憾なく発揮され、作中では当時の全女の事務所や新人寮なども完全再現されていたことが話題になった。その背景には、当事者の一人であるジャンボ堀の尽力があった。

伊藤「もともとは、おさむさんが経営していたちゃんこ屋さん(※ちゃんこ屋鈴木ちゃん、現在はメシ酒場鈴木ちゃんに移行)で、おさむさんとジャンボ堀さん、白石和彌監督たちが飲んでいて、そこでプロレス界を盛り上げてほしいというお話があったことがドラマ誕生の発端です。この時からジャンボ堀さんがとても尽力されていて、白石監督や関係者を連れて全女の事務所があった跡地に行ったり、選手たちのランニングコースになっていた目黒の権之助や行人坂、有名だった喫茶店などを案内したりしています。その他のリサーチなども含め、ジャンボ堀さんはこのドラマの『縁の下の力持ち』の第一人者だと思いますね」

 80年代の女子プロレスを題材にしたことで、マニアックな作品で終わってしまう恐れもあった『極悪女王』。そんな心配を吹き飛ばし、女子プロレスブームや80年代をまったく知らない若者たちも含めて幅広い層にウケている。

伊藤「この作品が刺さる人って、大きく2つに分かれるんですよ。実際の80年代当時を知っていて『本当に懐かしい!』って感動しながら観る人と、まったく当時を知らずに『異空間すぎて脳がバグりそう』という人と。当時を知らない人たちは『あんなに客席が埋まるわけがない』『プロレス会場でハッピを着た女の子たちがキャーキャー叫びながらポンポン持って応援してるわけがない』というんですけど、私としては『いや、本当にあんなんだったんですよ、もっとリアルはすごかったですよー』って言いたいですね」

 「日本で一番殺したい人間」と呼ばれるほど日本国中から憎まれたダンプ松本。当時を知らない人から見れば、ドラマを盛り上げるための大げさなフィクションに思えるだろうが、これも純度100%の紛れもないリアルだ。