――日本だと陰謀論でしか聞かない言葉ですが、結局トランプ氏のいうディープステートとは一体なんなのでしょうか?

川上 私は「権力」そのものだと思うんですよね。巨大産業、マスコミ、知的エリート層……。それらはすべてディープステートなのでしょう。しかし、明確に定義していないですよね。しっかりと、「ディープステートとは〇〇のことを指します」といってしまうと、一気に支持されなくなってしまいます。

――そこは、あやふやにしておいて、あとは個々のイマジネーションに委ねるということですね。

川上 そうです。ディープステートっていうひとつの単語を言っておけば、あとは支持者たちが「多分あれのことだ」「いや、これのことだ」と勝手に解釈してくれます。

――その「見えない何か」と戦っていたQアノンたちが、2021年にアメリカ合衆国議会議事堂襲撃事件を引き起こしたのですね。

川上 実はあのとき、もし議会を占拠して革命政権を樹立させていれば、トランプ政権はできていたのですよ。というのも、合衆国憲法には「抵抗権(革命権)」が記載されているからです。そのため、当時の私は「ついに、革命が起きたのか」と思いながら見ていましたが、人数が足りなかったのと、手際も悪かったので、どのみち無理だったでしょう。

――確かに、アメリカ合衆国の独立宣言には、そのような文言も盛り込まれていますが……。ということは、もし、あのときトランプ氏が先陣を切っていれば、革命は成功したかもしれないのでしょうか?

川上 いえ、当時のトランプ氏はSNSで煽動するのが精一杯で、それ以上の動きはできませんでした。ただ、議会を占拠して入念に準備をして、「我々は新しい国を作るんだ! 南北戦争の中にあって我らは北軍なんだ!」と独立宣言をすれば、成立していた可能性もあります。

――まるで、映画『シビル・ウォー アメリカ最後の日』ですね。

川上 実際、今回の大統領選挙でどちらが勝ったとしても、「アメリカは南北戦争になるのではないか?」とよく言われています。