同じように孤独な少年時代を過ごした人気映画監督に、スティーブン・スピルバーグがいます。『未知との遭遇』(1977年)や『E.T.』(1982年)で異星人に想いを寄せていたスピルバーグですが、すっかり大監督になって立場が変わります。トム・クルーズ主演のSF大作『宇宙戦争』(2005年)では、異星人を憎むべき侵略者として描いています。アポロ帽を脱いだスピルバーグには、なんだか裏切られた気がしたものです。

 ティム・バートンの場合、作風が大きく変わった理由として、家庭を持ち、父親になったことが指摘されています。『PLANET OF THE APES/猿の惑星』(2001年)をきっかけに、ティム・バートンは英国の演技派女優ヘレナ・ボナム・カーターとの交際を始めました。正式に結婚することはなかったものの、2人の間には一男一女が誕生しています。我が子が観ても安心なディズニー映画を、子煩悩な父親になったティム・バートンはつくったわけです。

 孤独なオタク少年だったティム・バートンは、映画界のヒットメーカーとなり、家庭にも恵まれ、オタクではなくなってしまいました。劇中、アリスはワンダーランドの住人たちから「昔のアリスとは違う」と言われますが、それはティム・バートン自身のことだったのです。

交際相手のキラキラ度が、作品のバロメーター

 その後のティム・バートンは、かつての短編映画の長編リメイク作『フランケンウィニー』(2012年)やディズニーアニメの実写化『ダンボ』(2019年)など、あまりパッとしない作品を残すようになりました。

 このままティム・バートンは枯れちゃうのかな~と思っていたのですが、久々のヒット作となったのが現在公開中の『ビートルジュース ビートルジュース』です。ウィノナ・ライダーやマイケル・キートンらが36年ぶりに、前作に続いて出演した同窓会的なホラーコメディです。キャストの中でひときわ目を惹くのは、ティム・バートン作品初参加となるモニカ・ベルッチです。つぎはぎだらけのコープスブライド姿が、モニカ・ベルッチの美しさをより際立たせています。