大好きな、頼もしかった親がだんだん年老いていくにつれ、いろいろなことができなくなっていく様子を見るのは切なく、やりきれないものです。それでも、これまで育ててもらった恩を返すため、親の老後は自分で面倒を見たい、と思う方も多いのではないでしょうか。
一方、「一番近しい身内は介護しない方がいい」ともいわれます。それはなぜなのでしょう?介護の流れを見ながら説明します。
いざ介護。でも、仕事はどうする?
いざ介護が始まると、今までの日常生活が少なからず一変します。症状が軽度のうちは介護休暇や介護休業を取ることで対応できます。一般的に、介護休暇は1年間で5日、介護休業は93日取得が可能です。デイサービスなどと併用して活用しましょう。
とはいえ、一度介護が必要な状態になると、薬などで進行を抑えることはできても、回復させることは難しいといわれています。介護休業などで対応していても、介護は長期化しがちなため休業期間も使い果たし、最終的に仕事を休めない状態になってきます。
そうなると、離職せざるをえなくなり、収入がなくなって不安が募ります。収入が不安定の状態では、精神面もバランスを取りにくくなりますよね。特に、親思いのやさしい女性はこの傾向が強いでしょう。
内閣府の「平成28年版高齢社会白書」によると、介護離職した5割以上の人が「仕事を続けたかった」と回答しています。一般的に、一度離職すると復職は難しいです。介護が終わってから仕事を探そうにも、以前よりも条件が悪くなったり、就職自体が困難だったりして、自分自身が生きていくこともままならなくなります。
「介護される側」も変わっていく
変化するのは「介護する側」だけではありません。「介護される側」、つまり親も変化していくのです。認知症の症状などから、すぐに怒ったり、感情をぶつけたりするなど、精神的なバランスを崩すケースがあります。
症状が悪化すると介護の専門的な勉強をしていない自分だけではうまく世話できず、お互いにイライラするというケースも。
よくあるのが「こんなこともできないの?」と親に言ってしまうトラブルです。何でもできていた自分の親がちょっとしたこともできなくなるという事実を認めることは、案外難しいものです。言葉や態度がエスカレートすると親の虐待にもつながりかねません。
症状が重くなってきたら、介護の専門家にお願いしよう
上記のような問題も含めて過去を知らない第三者に介護してもらう方が良い場合が多いのです。
症状が進んできたら離職を考えるより、良い施設を探しましょう。施設探しは、介護休業などを取得している間に進めておくとよいでしょう。すぐに入居と考えていなくても、早めに見当をつけておく必要があるからです。症状は一気に悪化する場合もありますし、何より、人気の施設の多くは順番待ちとなっています。早めに申し込んでいれば、いざ入りたくても入居できない、ということは避けられるでしょう。
施設を探すときのポイントは、入居者と施設のスタッフとの関係性です。施設へ足を運び、実際に話を聞いてみると雰囲気がわかります。あとは、親がそこで楽しく過ごせるかどうかを判断しましょう。
親の介護については、はたから見たら十分手を尽くしたと見えても、「もっと、ああすれば良かった」「こうしてあげたかった」と後悔することが多いのですが、こればかりは正解がありません。せめて、介護が終わってから自分が後悔しないように、そして介護が必要になったときに困らないように、情報収集しておきましょう。親も自分も最後まで笑顔でいられる、そんな準備をしておきたいですね。
文・矢澤理惠(ファイナンシャル・プランナー)
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