市野屋は1865年(慶応元年)創業。仕込み水は蔵がある女清水のほかに、男清水と、立山黒部アルペンルートの長野側、電気バスが走る関電トンネルの中に湧く “黒部の氷筍水(ひょうじゅんすい)” の3種類を主に使います。世界展開を進める生酛と山廃の『RYUSUISEN』をはじめ、『金蘭黒部』、『市野屋』。そして今人気の『氷筍水』をラインアップ。

▲大町商店街の東側に面した古い建物が市野屋です

明治時代の町屋や天井の高い土蔵が今も残るほか、麹室を新設し、分析器を導入するなど、酒造りの近代化を進めています。

▲秋田杉でできた麹室

2年前に完成した麹室。秋田杉の香りに満たされていて、1年目は杉の香りが強すぎたため、本格使用は昨年(2023年)から。春の新酒では感じるか感じないか程度の杉の香りがしたのだとか。

▲醪(もろみ)造りの様子を説明する佐伯佳之社長

仕込みタンクには麹や蒸した米、水が入れられ、1カ月ほどかけてアルコール発酵を行います。生産計画に合わせて、タンクごとに米や水、酵母の違うお酒を作ります。杜氏の大塚真帆氏が目指すのは、香りが華やかすぎると料理に合わせづらくなるため、香りを残しながら、旨味を出した酒造りなのだとか。

▲『 RYUSUISEN 生酛造り 純米大吟醸 ひとごこち』

2022年に市野屋に入社した杜氏の大塚真帆氏は、以前勤めていた京都伏見の酒蔵で生酛造りを復活させた方。そこで今回は、得意とする生酛造りのお酒を選びました。酒米は長野県で開発された “ひとごこち” で、精米歩合49%。フルーティな香りで、微発泡。ジューシーで甘酸っぱい味は口当たりがよく、それでいてしっかりした旨味が感じられました。

米にこだわる大町テロワール

白馬錦酒造の創業は明治39年(1906年)。2024年8月に薄井商店から、それまで自社の銘柄だった白馬錦酒造に社名を変更したばかり。7キロ圏内の農家と契約し、美山錦、ひとごこち、金紋錦、山恵錦など、長野県で開発された酒米を選びます。仕込み水はもちろん蔵がある女清水。ワインや料理などで、土地や風土などを表わすテロワールというフランス語がありますが、まさに米、水、土地にこだわった “大町テロワール” を意識する酒蔵です。