当時、まったくの無名だったしんいち。一方のコジマジックは収納王子としてブレークを果たした後である。
そうした時期における「3万円」という報酬については、2人のそれまでの関係性も踏まえなければならないが、一般論として、納得しなかったしんいちの主張のほうに妥当性を感じる視聴者が多かったようだ。
コジマジック自身はずっと謝罪の意思を持っており、しんいちの『R-1』優勝後には「あの時はホンマにゴメンな」というLINEも送っている。ペットボトルを投げつけて怒鳴りつけたのも、あくまで「台本に戻ってブチ切れなければならない」という仕掛け人としての責務を全うしたにすぎない。
だが、「やりがい搾取」が社会問題となり、フリーランスに正当な報酬を与えるべきという考え方が熟成されてきたこの時代に、受け入れがたいテーマであり、ブチ切れモードに戻るタイミングが「作詞の名義」という話題になってしまったことも不運だっただろう。しんいちは放送後にYouTubeでライブ配信を行い「自分が叩かれてるから、コジマジックさんを叩いてくれ」などと悪態をつき「金が欲しいねん」と露悪キャラで騒動の矢面に立とうとしていたが、今回に限ってはしんいちに同情が集まっているようだ。
いずれにしろ、まったく売れてない時期でも自分の作品にプライドを持ち、納得できない条件で提供することを拒んだしんいちの判断は恥ずべきものではないだろう。そして、その信念こそが今日のしんいちの成功につながっているにちがいない。
(文=新越谷ノリヲ)