◆ある人によって明らかになる女性問題…

『東京夫婦善哉』より
――あれはすごいエピソードでした。中国や韓国の研修アルバムを見ると女性のお弟子さんたちに囲まれた写真がたくさん。弥生さんが複雑な気持ちになる瞬間が映ってるんですよね。

馬場:あの場面を撮っている時は「これ出しちゃダメよ」と言われました。でもこれを出さないと面白くないよなと思っていました(笑)。

稔さんはあの家で弥生さんに天下を取られていましたから、女性問題はないと思ってた。ところが、右腕だったお弟子さんの榎園(えのきぞの)さん登場によって、初めて稔さんに女性関係があったと知り、稔さんに興味を持ったんです。夫婦関係の難しさです。

藤澤:榎園さんの登場でこの映画は変わっていきます。稔さんが師事した中国の気功家で医師でもある焦国瑞(しょうこくずい)老師がホテルで倒れた時のエピソードなど、生き生きとしていました。まるで目の前で起こっているかのように、過去のことを言うでしょ。あれは、普通の人にはなかなかできない。この映画をほんとうによく描くために努力をしてくれました。

馬場:あの人無くして、今回の映画はできなかった。そう思います。榎園さんの家で行ったインタビューの後、2週間後に亡くなってしまうんです。

藤澤:あのインタビューが置き土産のようです。

馬場:榎園さんという人は、稔さんにも弥生さんにも両方に愛情を持ってる人。普通はどちらかの味方ではないですか。それが星野夫妻の救いですね。心温かい方です。この映画は私が面倒をみるとまで言う気風のいい方で、すごく嬉しかったです。