◆伊藤沙莉や『虎に翼』と対等な緊張関係の『さよーならまたいつか!』
しかしながら、『虎に翼』と『さよーならまたいつか!』の関係は、これに当てはまりません。米津玄師は、あくまでも自身のユニークな作家性を堅持したうえで、ドラマのカラーにアダプトさせる道を模索しているからです。
前述の『音楽ナタリー』のインタビュー内で印象的だったのが、『虎に翼』という作品と女優・伊藤沙莉をつぶさに分析していることでした。
<主人公の寅子がエネルギッシュにずんずんずんずん進んでいく感じがあるんで、そこから四つ打ちみたいな小気味いいテンポで作っていかなきゃいけないんじゃないかと思った>とか、<まず主演の伊藤沙莉さんの声がすごくいいなと思ったんですよ。すごくゲインの効いた声というか、1回聞いたら忘れない独特な声をされている。そこがすごく好きで、あの“ゲイン感”をこの曲に宿したいなというのを無邪気に考えていました。>という部分。
つまり、米津は曲を劇の添え物ではなく、『虎に翼』、そして伊藤沙莉と対等な立場に置いている。その批評眼を自身の作風に反映させているのですね。こんな緊張感のある主題歌は朝ドラ史上初めてです。
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