◆母と娘は、受験においてもこじれやすい?
子と自分を同化させずという話がありましたが、長谷川さんによると、親子でこじれるケースは、圧倒的に母と娘であることが多いといいます。その理由はどこにあるのでしょう。
「すべてとは言いませんが、母と娘でのトラブルは多いように思います。同性同士という側面からか、母親は“娘に自分を見てしまう”傾向が強いように見受けられますね。その結果、娘の結果=自分の母としての評価という感覚に陥り、娘が勉強しないと母親が自分を責め、心を病んでしまうようです。
僕は受験という経験において結果を左右する要素は、親ではなく、そこでできる友人関係や先生だと思っています。つまり娘の成績は良いときも悪いときも、母親が原因ではありません。
それに塾には、明らかな“ハズレ”が存在します。具体的には、どんな塾でも、素行の悪い子や、クラス崩壊を招くような行動を取る子が一人でもいたり、クセの強すぎる先生に当たったりすると、その時点で受験は上手くいきません。こうした要素もありますから、親御さんは勉強するよう仕向けつつも、最終的には運の要素が大きいのだというおおらかさを持って望んでいただきたいなと思います」
“おおらかさ”について具体的に聞くと、「子どもの点数ばかり気にするのはダメですよ」と注意を促します。
「点数ばかりに親がコメントすると、子どもは『良い結果を出したら褒められる』といった条件付きの自信を持ちます。その体験はクセとなり、後の人生にも影響が出てしまいやすいんです。普段親御さんには、『点数ではなく、前向きにチャレンジした過程の部分を評価するように』と伝えています。チャレンジするからには、結果(点数)も取ってほしいと思う親の気持ちも分かりますが、そこはチャレンジの部分を意識的に見るようにしてください」
こうした側面を知ると、中学受験は子どもと親の人間力を試されているようにも感じられるのでした。
【長谷川智之】
ブログ名はジュクコ。1980年兵庫県明石市出身。高卒の両親のもとに育つもハードな中学受験を経験。白陵中学校・高等学校を経て、東京大学卒業後、大手塾に勤務、人気講師となる。2009年に独立してフリーランスの「プロ家庭教師」に。年間300件を超えるコンサル申し込みが殺到する。甲冑メタルバンド「Allegiance Reign」のベーシストとしても本気で活動中。ブログ「お受験ブルーズ」を運営。近著に『中学受験 奇跡を引き出す合格法則 予約殺到の東大卒スーパー家庭教師が教える』(講談社)など
<取材・文/おおしまりえ>