◆親子の足並みが揃わないまま受験したら…

「次のケースは、両親が共働きで激務の中で、中学受験に挑んだケースです。僕は家庭教師として定期訪問していましたが、子どもはそもそも塾や勉強を嫌がり、一切勉強をやっていなかったんですね。母親がこれをやるようにと指示を出しても、一切やらない。結構厳しく言ってもやらない。だから私が居るときに喧嘩になることも日常茶飯事でした」

 この家庭では、母親が忙しい合間を縫って学習のフォローをしていたそうですが、それでも、子どもと母親の足並みが揃うことはなかったといいます。

「両親がかなり激務なご家庭だったので、僕は娘さんに『このままだとお母さんが倒れるから、ちゃんとやりなさい』と伝えてはいました。でも結局子どもはやらず……その家庭は、なんと6年生に上がってすぐに、母親が脳梗塞で倒れてしまったんです」

 長谷川さんの予言通りとなってしまったわけですが、その後の展開は、意外にもドラマティックです。

「驚いたのが、そこから半年くらいしたら、子どもはあんなに嫌がっていた勉強を自主的にやり始めたんです。6年生の10月頃なので遅いとはいえ、そこから白地図(書き込み式の地図問題集)や基礎トレ(基礎力向上のために行う、ドリル形式の計算問題集)に取り掛かり、最終的にはBクラス(下から2番目のクラス)に上がり、中堅校に合格を決めました。

受験のテクニック本などでは、『子の受験は親のフォロー次第』と煽るものも多いですが、実際に親主導で受験に挑もうとすると、共働き家庭は倒れます。このケースは最終的に合格という結果で終わりましたが、受験で心や体を壊してしまったら、元も子もないから注意が必要です」