◆「お金は出しても無関心」は受験失敗の要因に

長谷川智也さん
長谷川智也さん
 近年、教育熱心なあまり、親が子どもの心身が耐えられる限度を超えて勉強を強制してしまうケースが「教育虐待」として社会で問題視されるようになってきています。

 長谷川さんから見て、親の問題による受験のつまづきにはいくつか傾向があるといいます、

「一つめのタイプは『圧倒的な準備不足やフォロー不足』が上げられます。過去に見た親子ですと、親が気持ち的には熱心だけど、子どもの学習状況にはあまり関心を持たず、塾や家庭教師任せといったケースがありました。当然お子さんは勉強に意識が向かず、成績は一切上がっていません。

 その家庭は首都圏・関西圏の中学受験の大手塾である『SAPIX』に入塾後、最初中間レベルのEクラスにいたものの、すぐに最下位クラスであるAクラスに落ち、以降一度も上がっていませんでした。SAPIXでは1か月に1回(4年生以降)のクラス分けテストが実施されるのですが、3か月以上Aクラスにいると、理解度の低い子に合わせた授業内容になるため、上位クラスにいる子との演習量と得点力の差が埋められず、再度浮上する可能性は低くなります。

 この家庭の問題は、僕から見ると、そもそもSAPIXに入塾するための準備をまったくしていなかった点にあります。具体的には基礎力を高めておくことで、読解力や計算力を上げておくことです。こうした準備をしていないから、解説を聞いても理解できない。SAPIXは基本的にあまり世話を焼かない塾なので、結局親がフォローに入らないといけないのですが、その親は無関心です。5年生くらいになると親も教えられないレベルの問題になり、結局家庭教師を頼るといった状況になりました。すでにそれでは、対策が後手後手になってしまい、よい受験にはなりにくいでしょう」

 長谷川さんはこのご家庭のサポート時、生まれて始めて0点の解答用紙を見たといいます。親は受験に対する熱自体は高かったそうですが、同時に「塾や家庭教師が何とかしてくれる」とどこか他人事。結局得意な理科・社会をなんとかするなど、対応に苦戦したといいます。