■メインイベント、夏くんvsママ

 いよいよ実家に帰って家族に報告することになった夏くん。対戦相手はママ(西田尚美)です。

 ガードを固めて情報を小出しにしながら、なんとか自分自身を守ろうとする夏くんでしたが、すべてを話し終えるとママの波状攻撃が始まります。夏くんの親として、水季ちゃんと同じく子を産んだ人間として、シングルマザー経験のある者として、女性の身体を持つ者として、さまざまにポジションを変えながら夏くんをコーナーに追い込んでいきます。

 ここまで、夏くんはいわゆる「巻き込まれ系の主人公」でした。急に自分の子どもが現れて、とにかく誠意を持って対応することしかできなかった。責任とか、そういうことについても必死に考えてきたし、誰も傷つけないやり方を模索してきたし、そう振る舞ってきたつもりでいた。そういう夏くんを、ママは「もう傷つけてますからね」と、しこたま糾弾したのです。水季ちゃんも傷つけてるし、弥生さんも傷つけてるし、大学時代に女の子に赤ちゃんを堕ろさせたことを隠されてきた私も傷つけている。おまえはもう、傷つけているんだと。怖かったですねえ、このシーン。全盛期のマイク・タイソンみたいだった。

 そしてグロッキーになった夏くんの姿を見ると、ママは「でも孫に会いたいと思っていたところだ」と自ら試合終了のゴングを鳴らし、コロッケに手を伸ばすのでした。