◆他者に「支配したい」と思わせる吸引力

 また、一郎の一番の魅力は、他者に「支配したい」という独占欲を駆り立てる吸引力にある。俊哉も美和子も一郎の“支配権”を我が物にしようととりつかれたように振る舞っていた。一郎に当初は不信感を抱いていた香苗も例外ではなく、一郎からどんどん目が離せなくなっている。各登場人物に「支配したい」と思わせることに、納得感を覚えさせられるのも櫻井だからこそではないか。

 1話で取材中に香苗から「先生は鈴木秘書官が、28年前のBG株事件で逮捕された宇野耕介氏の息子だということも知っていたんですか?」と痛いところを突かれた時、一郎は俊哉に助けを求めるような視線を送っていた。このシーンのように一郎は各登場人物に“ウルウル”した目線を送る場面が珍しくない。一郎のクリクリした目元で視線を向けられると、思わず「助けなきゃ」という気持ちにさせられる。ここまでの請求力のある目線は櫻井でなければ表現できず、一郎を中心とした牽制(けんせい)合戦が繰り広げられることは必然と思えてしまう。