◆ドラマ以外でも色々な顔を持つ櫻井だからこそ

 各登場人物の一郎評をまとめると“主体性はないが人を惹きつけるカリスマ性がある人物”と言って良い。人を惹きつける人の特徴として、善悪はともかくとしてハッキリと自分の考えや願望を主張する傾向が見られる。しかし、一郎がそれらを口にするシーンは見られない。つまりは主体性のなさとカリスマ性という本来共存しない要素を併せ持っている人物であり、かなり演じることが難しいキャラと言える。それでも、櫻井は見事に演じ切っているからこそ、ドラマの評判が上々なのだろう。

 それではなぜ櫻井はここまでハマり役なのかを考えてみたい。まず櫻井が最近出演したドラマは2024年1月から放送されていた『新空港占拠』(日本テレビ系)だ。主体性のない一郎とは異なり、櫻井は熱い正義感を持つ刑事・武蔵三郎を演じていた。前作とのギャップが激しいからこそ、一郎という人間の掴めなさがより助長されているのかもしれない。加えて、櫻井は役者業だけではなく、バラエティ番組に出演するテレビタレントとしても活躍中。さらには、『news zero』(日本テレビ系)のニュースキャスターも長年務めており、真面目なイメージも定着している。いろいろな顔を持つ櫻井が演じるからこそ、一郎というキャラに自然と奥行きが生まれたように思う。