■傍聴席では帽子を脱ぎましょう

 トリックについては、法廷画家が替え玉を用意してアリバイを成立させるというものでした。傍聴席で深くニット帽をかぶり、マスクをして法廷画を描いている男がいた。事件のあった時刻に、同じ服装の男が別の法廷で法廷画を描いていた。

 犯人は屋上から弁護士を突き落とした後、替え玉の男から事件時刻に開廷されていた絵を受け取り、自分が描いたものだから自分にはアリバイがあるという。

 まず、裁判の傍聴席では、傍聴人は脱帽を求められます。一度でも傍聴に行ったことがある人なら知ってると思うんですけど、必ず「帽子を取ってください」と言われるんです。だから、今回のアリバイ工作は現実的には不可能で、リアリティがない。

 別にドラマだから現実のルールに従わなくてもいいんですが、「法廷画家」という存在自体が法廷で傍聴人が「写真や動画を撮ってはいけない、録音をしてはいけない、手書きのメモはOK」というルールによって生まれた職業なわけで、法廷画家を登場させた時点でこのドラマは「法廷でのルールを守る」と宣言しているわけです。

 だったら、帽子をかぶっていることをトリックにするのはダブスタだよねという話です。