◆肉感を避ける日本の女性
ファッションは移りゆくもので時々の世相が反映されるが、それを着る女性たちの意識も如実に表れる。
「世界的に見て、日本ほど女性が生々しい肉感を避けようとする国はないと思います。肉感は日本で生きる女性にとってマイナス要素なんですよね。
海外に行くと、ボディラインが出るワンピースや胸元を強調したトップスを着ている女性を、世代を問わず目にします。
日本に生きる女性の多くに、性的に見られたくない、という意識があるのでしょう。これは、無遠慮な視線や、痴漢やセクハラに遭った女性が『そんな服を着てたから』と非難されるのと、決して無関係ではないです」
元鈴木さんは、コルセットのデザイン、販売も手掛けている。腰回りを締めてキュッとくびれを作ると、姿勢がよくなると同時に、いわゆる“女性らしい”シルエットになる。
「私のもの作りのベースには、常にフェミニズムがあるんです。コルセットの歴史は長いですが、女性の体を締め付けるところから、フェミニズムの文脈では精神面の抑圧や束縛もコルセットにたとえられますよね。
だったら私は、心と身体を締めつけるのではなく抱きしめるような着け心地のコルセットを作ろう、と決めました」
着脱が簡単で、調整しやすいコルセットを販売して、今年で6年になる。
「起ち上げ当時と確実に変わっているのは、女性が自分で決定して、購入し、支持してくれていると感じられる点です。女性の社会進出が進んでいるのも、ひとつの要因かと思います。自分で選んだものを身に着けるって、自分の身体を愛することにつながりますし、ひいては自分の人生を楽しめるようになると思うんです」