◆引退作はなぜか漫画原作もの
鈴木の放送作家、脚本家としての引退作が『離婚しない男』なのだが、『奪い愛、冬』『先生を消す方程式。』(ともにテレビ朝日)など、これまで彼が手掛けたぶっ飛んだドラマはみなオリジナルだった。
が、今回はなぜか漫画原作もの。最後なんだからとことんオリジナルをやってほしかったが、あえての原作ものというところがまた切れ者の鈴木の策なのかもしれない。あるいは、これが2024年現在の地上波の限界ということなのかもしれない。
原作(大竹玲二作)をざっと読んでみると、夫が妻に浮気され、親権をとって離婚するというベースは同じで、夫のキャラがドラマのほうが不憫(ふびん)な感じになっていて、浮気のディテールのバカバカしいエロさにオリジナリティをかなり付加している印象である。
原作は絵の主線が力強く、ディテールの書き込みが細かく、画面が黒っぽく感じる青年漫画調で、エロの描写が生々しいが、ドラマでは、昨今のコンプライアンスの事情であろうか、俳優の身体の露出は極力抑えめで、その分、バカバカしいほどの描写で笑いに持っていく。
猫の首輪プレイとかチェリーとか小道具で想像力を刺激する。生々しい行為そのものではなく、喜劇の演技だと思えば、篠田麻里子も小池徹平も藤原紀香も真顔でやれるのかもしれない。