前回のドラマには彰子の「嫁入り道具」として、見事な山水図の屏風に、花山院(本郷奏多さん)を含む、当時の宮廷歌壇の大御所たちの歌の色紙を貼り付けたものを持たせる映像が出てきました(史実では花山院の歌の色紙は「よみ人知らず」と作者がボカされていたようですが、道長と花山院は意外に性格が合うというか、仲が良かったようですよ)。彰子の入内は、道長以下、公卿たちの「総意」であり、屏風は「定子ではなく、彰子を寵愛するように」と一条天皇に迫る代物でもありました。

 ドラマでは屏風を一瞥した一条天皇演じる塩野瑛久さんが、ほんの一瞬ですが、皮肉な笑みを浮かべていましたね。しかしその直後、愛想のひとつもいえない彰子の実物と対面したときには、なんともいえない複雑な表情を見せました。ドラマの今後を占う重要なシーンだったと思われます。

 一条天皇は、どう見ても父親の「操り人形」である彰子に自分を重ね、同情を抱いてしまったのかもしれませんね。同情がいつしか愛に変わり……というのは、あまりに古典的な愛の化学変化ですが、史実においても、無愛想な彰子が一条天皇の愛をわしづかみにできた理由は、本当にそういうところだったのかもしれない、と思わせられる一幕でした。恋愛ドラマの大御所として鳴らしてきた大石静先生、さすがでございます。

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