──歴史エッセイスト・堀江宏樹が国民的番組・NHK「大河ドラマ」(など)に登場した人や事件をテーマに、ドラマと史実の交差点を探るべく自由勝手に考察していく! 前回はコチラ

 前回(第27回)の『光る君へ』では予想通り、まひろ(吉高由里子さん)が夫・藤原宣孝(佐々木蔵之介さん)と不仲だった頃に参詣した石山寺で道長(柄本佑さん)の子を懐妊していました。夫以外の男の子供を「大河ドラマ」のヒロインが産むというまさかの展開に、友人と「時代だね」「時代だ」と言い合っていた筆者ですが、みなさまはいかがご覧になったでしょうか。

 予想外だったのは、かなり早い段階で、まひろが「よく気の回るこの人が気づいていないはずはない」と宣孝に真実を告白してしまったことです。しかし、宣孝はまひろを「許す」どころか、二人で育てようと言い出し、「道長の娘を育てていたら、自分も引き立ててもらえるだろう」と喜びさえ見せていました。

「紫式部が道長の子を授かる」のはドラマオリジナルですが、平安時代の貴族社会は男女のスキャンダルを忌み嫌う一方、裏ではかなり乱れていましたから、ああいうことはあり得たと思います。特に中流貴族の男性にとって、自分の妻が自分よりも上位の貴人の寵愛を受けていると知ったら、正しい対応は「嫉妬」ではありません。さりげなく二人の恋の道を助けてやるくらいの度量が必要でした。