その点、ドラマの宣孝は当時の貴族としては「満点」だったといえるでしょうが、宣孝というキャラを見る限り、本当に彼が何を考えているかまではわかりません。睡眠時無呼吸症候群が心配ですが……。

『光る君へ』が今後、さらに恋愛至上主義を極めていくだろう、と前回のコラムでお話した矢先ですが、次回はタイトルも「一帝二后」で、誰が天皇の“ファーストレディー”なのかを巡る争いが勃発する予感満載となってきました。

 ドラマでも「一帝二后など、前例がない!」と公卿たちが反発していましたが、そもそも「一帝二后」は「日本語としてヘン」なのですね。なぜなら「后」とは、数いるお妃たちのトップに君臨する唯一無二の女性という意味なので、論理的に考えれば定員は一名だけのはず。

 それに平安時代の感覚では「皇后」=「中宮」ですから、すでに出家してはいるものの「中宮」である定子(高畑充希さん)を傍から離そうとしない一条天皇(塩野瑛久さん)に対して、定子には「皇后」の位を与えるから、それで空位になった「中宮」の位に、藤原道長の娘の彰子(見上愛さん)を押し込みますよ……というのは、いかにも道理が通らないめちゃくちゃな発想でした。

 ただし「前例がない」と言われても、定子が「中宮」になったときも同じような諍いがあったのでは? という読者もおられるでしょう。道長の長兄である藤原道隆(ドラマでは井浦新さん)が、愛娘・定子を一条天皇に入内させただけでなく、名実ともの“ファーストレディー”である「中宮」に祭り上げようと、あれこれ悪知恵を働かせたことはこれまでのドラマでも詳しく描かれましたね。