◆タブー視された性教育について発信する

性教育の文脈から「 アソコ」をテーマとしたショーを行った際のラビアナさん
性教育の文脈から「 アソコ」をテーマとしたショーを行った際のラビアナさん。「洋画などの字幕で女性器・外陰部のことを“アソコ”と訳していることを皮肉に表現しましたた」とのこと
――性教育を発信しようと考えた理由はありますか?

出身地のブラジルでの経験が大きく影響していると思います。学生時代、ブラジルに一時帰国していたのですが、そこで感じたのは、ブラジルの学校制度が日本とは異なるということでした。

当時ブラジルでは、学力や単位を満たしていないと義務教育でも留年するのが一般的で、さまざまな年齢の生徒が同じ教室で授業を受けていました。学校は朝・昼・夜の3部制(夜は高等部のみ)で、中には妊娠している生徒もいました。ブラジルでは中絶が違法なので、妊娠した場合は産む以外の選択肢がないことを知った時はかなりショックでした。

一方で、ブラジルの性教育は進んでいるとは言えませんが、当たり前のようにコンドームの付け方や望まぬ妊娠の避け方などを教えてくれます。なので、日本に来た時には性教育が遅れていることを感じ、性教育を発信しようと考えました。

――「性」にまつわるテーマは私たちにも密接に関係していると。

そうですね。性を「恥ずかしいもの」「してはいけないもの」として捉えるのではなく、それにより身体や精神が健康な状態になること、つまり「セクシャルウェルネス」の文脈を重視しています。かつてはアダルトグッズと呼ばれていたものも、今ではセルフプレジャーグッズと呼ばれるなど、性教育だけでなく性の健康に関しても私たちの日常となりました。

――ドラァグクイーンと性教育の組み合わせは興味深いです。

パフォーマンスは主にクラブイベントで行われることがほとんどですが、クラブというと社会的には「危ない場所」という先入観があります。ですが、単純に自分のコミュニティや居場所を求めている人がそこにいるのも事実です。

ただ、その中で性暴力・被害があることも確かです。そこで、普段は話せないようなテーマをパフォーマンスを通じて発信し、みんなが気軽に話し合える場を提供したいと思い、性教育パフォーマンスを始めました。

――具体的に、どのような内容のパフォーマンスをしていますか?

過去にやったのは、薬物依存、性感染症予防、コンドームのつけ方、性的同意、LGBTQ+の人権などについてです。