◆生徒に向き合おうにも…
さいき「そうした状況は、権力を持った加害者にとってはたいへん都合がいいだろうと想像できます。そのわりに、これは作中の男性教師がつぶやいたセリフでもあるのですが、『教師が自分の権力性に無自覚すぎる』んです。いまの学校現場で、加害教師が動きにくい環境を整えられるかというと、非常に絶望的な気持ちになります」
昨今の教師は、多忙を極めている。過重労働で精神を病んだり志半ばで離職したりするケースがあとを絶たず、その影響で教師不足が深刻化している、というニュースを日常的に見聞きする。
さいき「事務仕事が終わらないとなると、生徒の話を聞く時間を削るしかない。ひとりひとりの生徒を見ていたら、身が持たない。向き合おうとする教師ほどつぶれてしまうのだろうと思わされました。この環境こそが、加害教師の思うツボ。生徒に目が向かない、同僚の動きにも目が向かないとなれば、やりたい放題できますよね」