◆遺伝子を残すために手段を選ばないのは人間だけ

 世の中には子どもができず、特別養子縁組をする夫妻がいる。あるいは里子を育てている人たちもいる。子どもがいない生活を楽しもうと決めるカップルもいる。また、悠子の友人の画家・りりこ(中村優子)のように誰ともセックスはしないと決めている人もいるだろう。産む女、産まない女、産めない女……。それぞれに苦悩を抱えている。

 遺伝子を残したいのは生き物としての本能だろう。だが、遺伝子を残すために手段を選ばないのは人間だけだ。そして「子」を巡っては、女性だけが心身ともにつらい思いをする。その理不尽さを、リキも悠子も痛いほど味わっているのだ。悠子の義母である千味子でさえ、つわりに苦しむリキを手伝いにいって罪悪感を覚えてしまう。原作にはないシーンだが、黒木瞳がその罪悪感を悠子に向かって吐き出すシーンは迫力があった。ただ、人は生まれながらに不公平であり、千味子の罪悪感が「持てるものだけが覚える上から目線の罪悪感」なのが虚しい。

 それぞれの女性たちが抱える、それぞれの喜怒哀楽と息詰まるような心理を、このドラマは丁寧に描いている。男にとって女にとってと性別でカテゴライズするのはむずかしい時代だが、それでも「産む」のは女に限られている。どうがんばっても男には産めないのだ。だからこそ女は哀しい。そして女はたくましい。

 9回目の最後、基がりりこの家にいるリキを訪ねてくる。話している途中でリキが破水した。最終回、どういう結末が待っているのだろうか。

<文/亀山早苗>

【亀山早苗】

フリーライター。著書に『くまモン力ー人を惹きつける愛と魅力の秘密』がある。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数。Twitter:@viofatalevio