◆お先真っ暗な現状から、抜け出したくて代理母に
そして彼女は卵子提供ではなく、「代理母」への道を歩んでいく。それを依頼したのは、草桶基(稲垣吾郎)、悠子(内田有紀)夫妻。世界的バレエダンサーだった母・草桶千味子(黒木瞳)は、息子の基が悠子と不倫し、ダンサーである妻と離婚して再婚したため、悠子を快く思っていない。しかも、息子夫婦にはなかなか子どもができない。千味子は、自分と息子の遺伝子を継ぐ者の誕生を熱望している。悠子にとって義母にあたる千味子の存在感は、原作よりドラマのほうがずっと大きい。そして基も、「おかあさんと僕の遺伝子を継いだ子をバレエダンサーにしたい」と何の疑いもなく思っている。
ところが悠子は三度流産したあと、もう子どもはむずかしいと言われてしまう。だが基はあきらめきれない。そこでアメリカの生殖医療専門クリニックの日本エージェントに登録し、紹介してもらったのがリキというわけだ。
リキは1千万円という報酬をもらい、代理母になる決意を固める。とにかく今の状況から抜け出したかったのだろう。アパートの自転車置き場で、怒鳴り散らす変なオヤジにからまれ続け、節約のためランチさえまっとうに食べられない。もうじき30歳、お先真っ暗な現状から、どんな手を使っても抜け出したい。人工授精で子どもを授かれば、今の困窮生活から逃れられる。彼女はそう考えた。基と悠子は書類上、離婚し、リキは基と婚姻届を出した。子どもを産んだらすぐに離婚して、基と悠子は再度、婚姻届を出す。そういう手はずになっていた。