◆妊娠したが、依頼者の子どもかどうか分からない
前金が振り込まれた。だが人工授精をする数日前、彼女は実家に戻り、以前の不倫相手に会ってホテルに行ってしまう。それは基が、地元に帰るなら連絡くらいすべきだとか、日常生活における細々とした注意を書き送ってきたのが原因だった。自分の自由を侵される恐怖と怒りから、彼女は元不倫相手と寝たのだ。さらに東京に戻ってから、今度は、代理母になると決めたとき、どうしても気持ちいいセックスがしたくなって女性用風俗で買い、そのまま友だちになったダイキとも寝てしまう。リキの心の中には、「生殖のために買われる」ことへの違和感がつきまとっていたのだろう。
人工授精の結果、妊娠したが、リキは「おそらく基の子だ」と思いながらも不安が拭いきれず、基の妻の悠子にすべてを打ち明ける。悠子はそもそも、代理母には前向きではなかった。だが自分が原因で基夫婦を離婚させたこと、不妊も自分が原因であることなどから、どうしても反対ができなかった。リキが妊娠したと聞いたとき、悠子は「自分の存在って何?」と衝撃を受ける。夫の子ではあるが、自分の子ではないのだ。それでも夫の子を育てていけるなら、夫が喜ぶならと受け入れた。だが、リキは、他の男の子である可能性もあるというのだ。悠子はその話を夫にすることができなかった。